セルバランサー
[SeriesCellBalancer for LiPoly]

   
2004.09.02 掲載
2005.02.24 更新
 


 
(左:完成した状態 右:キットの状態)
 

 このキットはリチウムポリマーバッテリパックのセル電圧をマッチングさせるものです。直列パックの各セルを同時0.001Vの精度でマッチングすることにより、バッテリパック出荷時のバランス崩れ、使用環境による容量差のバランスを取り直すことが可能です。
 一度セルバランスを行ったパックは、次回から充電完了後に各セルの電圧をチェックすることにより片減り、劣化の進行具合が判断ができると考えています。
 ただし、既に痛んだセルを回復させることは出来ません。

 動作原理については [MN-017] シリアルセルバランサー に載せています。
 

 このキットを使用した結果として起こる如何なる問題・事故について当方は責任を持つことはできません。

使用に当り必要な物
 
■充電器接続用のコード
 
キットには含まれていませんので、使用する充電器に合せて用意してください。
電流は0.5A程度ですから写真のコードは少し大げさです。
 

■リチウムポリマーバッテリ 2S、3S
 
 セル当り3.7V(充電時4.2V)容量500mAh以上のリポで使用可能です。
ただし、各セルからの取り出しが有ること。ポリクエスト等のマルチコネクタが該当します。
 セルバランサー2台を直列使用することにより6Sまで使えます。

■充電器
 
充電電流が0.5A(500mA)に設定できる物。リポ用でなくても原理的には使用可能ですが動作確認はしていません。3Sの場合はニッカド10セルが可能な物。
当方での動作確認は シュルツェ isl6-330d(Ver8.06) で行っています。
 
 ●動作確認した充電器
 
 
シュルツェ isl6-330d(Ver8.06)

 ▲動作しない(エラーとなる)充電器

 K&S製 KS CHARGER DX PRO

■テスタ−(デジタルマルチメータ)
 
セルバランサーの電圧設定及び各セルの電圧確認に必要です。 
4300カウント以上のデジタル表示のテスター(マルチメータ)。俗に4桁半と呼ばれているもので、4.200V計測時に0.001Vの単位が読めるもの。市販価格で1万円近くします。
自分は3桁半ですが5000カウント表示が可能な三和電機計器株式会社製のPC500使用しています。
http://www.sanwa-meter.co.jp/dmm_index.html


製作方法
 
 [回路図・基板面実装図・部品リスト 2004.12.04版] ← PDFファイルです
 
 製作にあたっては特に難しいところは有りません。パタン−ン図どおりに背の低いものからハンダ付けします。1%抵抗を使用していますので判別が難しい場合はテスターで抵抗値を確認してください。
 
 FETは背中が上になるように足をまげて、ヒートシンクを取り付けます。
 
 手前側のジャンパーピンは各セルの電圧チェック端子です。テスターの端子を挟んで使用できます。
 ポリクエストのマルチコネクタを使用可能としています。自分の場合は、2Sの場合は3線で済みますのでサーボコネクタ使用しています。
 
調整方法 動作確認はシュルツェ isl6-330d(Ver8.06)で行っています。
 

3ブロックにそれぞれボリューム(半固定抵抗)が2箇所ありますが、中央側のボリュームが電圧調整用です。下側は電流インジケータ(LED)の動作点調整用です。

各ボリュームはセンターにしておきます。
調整する時は、リポは接続しません。

シュルツェをリポ3S、充電電流を0.5Aとしてセルバランサーと接続します。
充電電流が徐々に上がり、その間エラー表示が出ますが無視してください。
電流が0.45Aを超えたあたりでLEDが点灯します。

この状態でしばらく放置して、ヒートシンクを十分に熱します。(10分位)

セルバランサーはかなり熱を持ちますが異常ではありません。なぜならこの状態で 4.12V×0.53A×3=6.55W の放熱をしているからです。

電圧チェック端子で各ユニットの電圧が4.120Vとなるように中央側のボリュームを調整していきます。何度か繰り返して±0.001V(1mV)の単位まで合わせます。
(電圧が振れてしまう場合はプラスチック製のドライバーを使用して下さい)

周囲温度により基準電圧が変動しますが,各ユニットが同じ電圧となっていれば問題有りません。
自分は4.120Vで使用していますが、調整可能な電圧範囲は約4.00〜4.17Vです。

電流インジケータ(LED)の動作点調整は電流計を使って調整しますが、目安ですのでそのままで良いと思います。
 

使用方法 (その1) セルバランスの取り直しに使用する場合
 
■バッテリの準備
 
3Sバッテリーの各セルが4.12V未満となっているか、セルごとにテスターで確認し、必要に応じて放電させます。
 
但しあまり低くしすぎるとバランス作業(充電)に時間がかかるので、4V弱位が良いでしょう。
 
■セルバランス作業
 
シュルツェとセルバランサーを接続した後、マルチコネクタでリポを接続します。
 
設定電圧に達するまではバッテリ側に充電電流が全て流れます。
その後、設定電圧に達したセルは充電電流が徐々にセルバランサー側に流れるようになります。バッテリ電圧は4.12Vでフローティングされます。(固定される)
LEDは充電電流のうち約0.45Aがセルバランサー側に流れるようになると点灯します。
これは逆の言い方をすると0.53A−0.45A=0.08Aがバッテリ側に流れているということです。
(シュルツェの0.5Aモードは0.53Aの充電電流です)

上記の動作が各セル単位に同時に行なわれることがこのセルバランサーの機能です。

全てのLEDが点灯してから約30分位したら出来上がりです。3Sバッテリを先に外してください。
※この時間についてはバッテリ容量が大きい場合はもう少し短くても良いと思います。

次にセルバランスを終了したパックをリポ用の充電器で充電します。
充電完了後(多少時間があいても良い)に各セルの電圧をそれぞれ測ります。この時の各セルの電圧をメモしておいてください。
この値の差が少ないほどセルの性能(容量)が合っていると考えて良いでしょう。0.001Vまで測れるテスターがあればその様子がよく分かります。
※充電完了直後は電圧の下がり方が大きいので、数時間放置した後に測った方が落ち着いて作業できると思います。充電完了直後は徐々に電圧が下がっていきますが、同時仕上げなので相対的な差は同じです。(一晩置いても同じです)

■運用方法

自分の場合は、通常の充電ではセルバランサーは使用していません。
数回程度の使用ごとに、充電完了時に各セルの電圧を測定してみてください。そのがセルバランス時に記録した値と比べて大きくなるようでしたらバッテリの使用方法に問題があるか、セル自体の劣化が考えられます。

※どこかのHPで「数回に1回はセルバランスが必要」などと書いてありますが、各自確認してみてください。
 

使用方法 (その2) バラセルからマッチドリポを作る場合

メーカーでは容量のそろったセルをパックしているみたいですが、完全ではないみたいです。
830mAhのセルを20パック程入手して特性の揃ったセルでパックを組んで見ました.。

リポは温度変化により容量そのものが変りますので、恒温室で作業でもしない限りは容量計測をしても無駄になります。
そこで、セルバランサーを使って6セルを同時にバランス取りを行い、その中から選別を行いました。
 
マッチドにすることにより、長寿命が期待できると考えています。

 

 

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